こんにちは、気分障害のアキです。
うつになるとやたらめったら死にたい気持ちがわいてきます。
でも、それって認知のゆがみのひとつ、白黒思考の極端な例だと思うんです。
とはいえ、うつ病の「死にたい」は決して馬鹿にできるものではありません。
「死にたい」を分析してみる
私がうつで死にたいと思う時は、大体2つのパターンに分かれています。
- 理由がある「死にたい」
- 理由が分からない「死にたい」
理由がある場合、その理由を突き詰めて考えてみると、実はめちゃくちゃどうでもいいものだったりします。
理由がある「死にたい」
例えば、布団から出ようとして「死にたい」が頭にふっとわいてきます。
なぜ死にたいと思ったのか?よくよく考えてみると、「寒いから布団から出たくないんだ」という結論に至ります。
理由がある「死にたい」はものすごく極端な「白黒思考」のひとつなんです。
白黒思考:物事を全て白か黒で極端にわけようとする考え方
「全てが完璧にできないと、私はダメな人間だ。」
箸が転がっただけで笑っちゃう人、いますよね。
痛風って、風が吹いただけでも痛いって言いますよね。
うつ病の場合、風が吹いただけで「死にたい」と思えてしまうんです。
生きるか死ぬかの白黒思考です。
会社の先輩に会うのが嫌だ → 死にたい
通勤電車に乗るのが嫌だ → 死にたい
晩ごはん作らなきゃ → 死にたい
今日は夜寝れるかな → 死にたい
ちょっとでも不安だったり不快なことが頭をよぎると、それが全部「死にたい」に変換されてしまいます。
理由が分からない「死にたい」
理由がある場合は、「いやいや、死にたいんじゃなくてただ寒いだけだ」と認知のゆがみを正すトレーニングをすることである程度コントロールできますが、厄介なのは理由が分からない「死にたい」です。
うつ病には「思考力の低下」という症状があります。
これに「白黒思考」が組み合わさることで、自分がどんなことをきっかけに「死にたい」と感じているのかわからない状態になってしまいます。
こうなると、わけの分からない「死にたさ」がずっと頭の中に居座ってしまい、追い払うのが難しくなります。
この「死にたい」がどんどんエスカレートしていくと、うつ病特有の「マイナス思考」と合わさって、
- 死にたい
- 死んだ方が良い
- 死ぬしかない
- どうやって死のう
というように、「死にたい」がエスカレートしていきます。
このような状態の時、本人は非常につらいです。
涙が止まらなくなったり、あるいは空虚で何もする気が起きなかったり、躁うつ混合状態や回復期では自殺方法を具体的に検討したり、あるいは自殺に至る場合があります。
死にたくなったら、逃げちゃおう
理由がない「死にたい」に襲われているときは、非常に強いストレスを感じて脳が疲れている状態と言ってもいいでしょう。
そんな時は、嫌なものから距離を置いたり、シャットダウンしてしまうのが一番です。
- 頓服で抗不安剤などを処方されていたら、飲む
- 眠れる環境であれば、寝逃げする
- 会社に行っている人は、休む
- 自殺を考えている人は、医師などに電話する
うつには気分の波があります。
「死にたい」の大きな波が通り過ぎていくのを待つのです。
通り過ぎてしまえば、「なんであんなに死にたかったんだろう」と不思議に思えます。
うつの「死にたい」は馬鹿にできない
これを読んだら、健常者の方は「うつの人の死にたいってその程度なのか」と思うかもしれませんが、頭が「死にたい」で埋め尽くされている人は、理由を問わず常に死と隣り合わせの状態であると考えてもらいたいです。
「そんなこと」でも「死にたい」のです。
借金で生活が回らなくてもう首をくくるしかないくらいに追い詰められた人と、感じる「死にたさ」は同じです。
「そんなこと」でも本当に自殺してしまうのがうつという病気です。
平成27年中における自殺の状況から、自殺要因をピックアップしてグラフ化しました。
健康問題を理由に自殺をしている人は、全自殺者のおよそ半分に及んでいます。
平成27年年齢別、原因・動機別自殺者数を見ると、健康問題の中でもうつ病や精神疾患による自殺がかなり多くの割合を占めていることが分かります。
全自殺者の5人に1人がうつ病を原因とした自殺です。
全自殺者の3人に1人がうつ病を含む精神疾患を原因とした自殺なんです。
「死にたい」と感じやすくなるだけではなく、実際に自殺してしまう可能性が高いのがうつ病という病気なのです。
身近にうつの人がいる方へ
厚生労働省が自殺対策施策として、「ゲートキーパー」の養成を推進しています。
「ゲートキーパー」とは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことで、言わば「命の門番」とも位置付けられる人のことです。
自殺対策では、悩んでいる人に寄り添い、関わりを通して「孤立・孤独」を防ぎ、支援することが重要です。1人でも多くの方に、ゲートキーパーとしての意識を持っていただき、専門性の有無にかかわらず、それぞれの立場でできることから進んで行動を起こしていくことが自殺対策につながります。
自殺してしまう人は、一人で死んでしまいます。
あなたがいるだけで私にとって価値がある、と伝えるだけで、その人は孤独ではなくなるかもしれません。
「そんなこと」で死なないために、病気に殺されないために、自分の心の中にゲートキーパーを置きましょう。