こころの風景

雨とコーヒー

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走り出した自転車がとらえたのは、ベランダから見た青空とは一転して西に浮かぶ暗い雲だった。息子に「雨が降りそうな雲だね」と声を掛ける。「お母さんが家に帰ってから降ると良いね」と息子は言う。しかし、その雲は間もなく私の頬にピタリと雨粒を降らせるのだった。

学童につくなり「いってらっしゃい」と息子を急いで自転車から降ろして、すぐさま帰路についたけれど、ささやかに頬を濡らした雨雲はどうやら私のすぐ上を通り過ぎようとしているらしく、すぐにさらさらとまとまった雨を降らせるようになった。自転車の前かごに入れていたバッグを、カバーで覆う。顔の輪郭をなぞるように液体が零れ落ちていく。それは自分の汗なのか、雨なのか、区別がつかなかったけれど、不快に思い袖でぐいとふき取った。

雨足は強くなっていく。東の空はベランダで見ていたときと同じように晴れていて、太陽が顔をのぞかせていた。狐の嫁入りだ。私の上にある黒い雲はどこからどこに向かっているんだろう。自宅近くまでたどり着いたころには、雨は小康状態に変わっていた。私は全身濡れた身体でバックを肩にかけ、コンビニでコーヒーを買う。コンビニを出たら、黒い雲は北の方に流れていったようだった。私が外に出るときは、もう来ないでくれ。黒い雲を見送りながら、自宅に向かう。腕についた雨粒が転がり落ちていく。背中を転がり落ちていくのは恐らく汗だ。雨と汗でびしょびしょに濡れた身体をどうするわけでもなく、家に帰ってからまず向かったのはベランダだ。残り4本になった煙草の1本を取り出して、火をつける。コンクリートに切り取られた東の空は相変わらず夏の終わりらしい雲を浮かべていた。

今日は受診日だ。先生に何を伝えよう。サインバルタからレクサプロに変わって、明らかに私は躁転していた。毎日のように商店街、あるいはドラッグストアに出かけては、自分を着飾るものを買って帰って満足して、満足しきれず、もやもやとした思いを抱えて過ごしている。もやもや。

テーブルの上でアロマディフューザーがシューと音を出しながら蒸気を上げている。ベルガモットの香りを漂わせながら。

あ、コーヒー。

コンビニで買ったコーヒーを入れておかないと。鍋に水を入れて火をかける。コーヒーの袋を開けたところで、瓶がないことに気がつく。あれ、コーヒーを切らした後、瓶は?どこにいった。まさかと思いながらゴミ箱を覗くと、蓋のない瓶が中にあることが確認できた。買いなおしか。なんで捨てたんだろう。確かに、腕が記憶している。中身のない瓶のふたを可燃ごみに、瓶を資源のごみ箱に入れたことを。しまったなあ、意識していなかった。そう考えながら、新しいコーヒーをスプーンですくう。あれ、軽い。嫌な予感を感じながら、鍋の湯を注ぐと、コーヒーの粉はいっせいに浮かび上がって、自身がインスタントコーヒーではないことを知らせてくれた。しまったなぁ、しっかり見ていなかった。すぐにそれを流しに捨てる。オリジナルブレンドと書かれたコーヒーの袋が目に入る。そのパッケージには、フィルターの上に敷き詰められたコーヒーの粉にお湯を注ぐ写真が描かれていた。ため息をつく。400円くらいだったか。たかだか400円でも、傷病手当金しかない私にとっては大きい400円だった。

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